大都会、ブリッジポート。
煌びやかなビルや店が並ぶ大きな街。
………のとある一角に一人の青年が呆然と立ち尽くしていた。
「ええっと…多分ここであってるよね…?」
不安げに呟きながらもその建物へと入っていく青年。
ピンポーン。
インターホンを押すと少し間を開けてマイクを通して声が返ってきた。
「はいはーい。どちら様ー?」
明るい調子の女性の声が聞こえてくる。
「あっ、あの家政婦の募集を見て来たんですけど…まだ募集してますか?」
「えっ?……あぁ、多分してると思うよー。」
(多分…?この人じゃないのかな)
「じゃあそっちに行くから待っててくれる?」
疑問が浮かんだが、とりあえず置いてある椅子に座って待つことにした。
青年の名前は 藤和 萩(トウワ シュウ)。
最近このブリッジポートにやってきたばかりである。
心許ない所持金と、都会の目を疑うような物価に彼は心身ともに疲弊していたが
取りあえず、住み込み場所が見つかりそうで多少安心している。
「それにしても立派な建物だなぁ…個人で経てたマンションみたいだ…。」
きょろきょろとつい周りを見渡してしまう。
萩がそうしている内に上から人がやってくる。
(お、あの人かな?新しい家政婦って……男?)
(ま、仕事してくれればそれでいっか♪)
「どうもー♪ わざわざ来てもらってすいませんねー。」
後ろから聞こえた声に慌てて立ち上がる萩。
「あっ!えっとす、すいません!」
「いいのいいの♪ここはお客さんが待つ場所だしねー。」
「は、はぁ…」
「そんで名前は?あ、あたしはレイラ。レイラ・グァヴァラよ♪」
「藤和萩です。よろしくお願いします。」
ニコニコと笑っている女性のハイセンスな服装に萩は驚きながらも会話を続ける。
「そ、その~…ここに住んでるんです、よね?」
「そぉよ♪ ここはまぁ共同生活してるんだけど、それぞれの仕事の都合で家事ができないのよねぇ。」
「なるほど…」
「あ、ちなみに募集かけてるのってここの管理人って言うかボス?
ボスがかけてるから、とりあえずボスに遭ってもらえるかしら。」
「は、はい!」
一番上にいるから着いてきてねーと言うレイラに萩は大人しく着いて行った。
(……あれ?エレベーターじゃなかったっけ…?)
―――――――――
「ニィ~ナァ~ お客さんが来てるわよ~」
最上階の部屋に入るなり、レイラは声を出した。
だが。
「………。」
「………。」
「ね、寝てますね。」
「寝てるわねぇ~ うっう~ん」(のびのび)
どうしたらいいかわからない萩を置いて、レイラは恐らく寝ているボスに近づいて行った。
→ 後半へ続く。
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