2012年9月18日火曜日
02 波乱の顔合わせ
萩はニナとレイラに連れられて別室へやってきた。
そこには恐らくここの住人であろう、 男性二人も待っていた。
用意された椅子に腰かけさせられると二人は向かいのソファーに座る。
「…藤和さん、だっけ?」
「は、はい!藤和萩です。」
「志望動機は何ですか?」
「数日前にブリッジポートにリバービューから出て来たんですが、
どうにも、お金が思いのほかすぐに無くなってしまって…。」
「それで住み込みで働けるうちにきたのねぇ♪」
「あ、そうそう。 あんた達、自己紹介しときなさいよ。」
レイラが男性二人に声をかけた。
すると、レイラの隣にいる男が面倒そうに声を出す。
「あー…俺、ジュノン。ジュノン・サヴェージね。」
「態度悪いわねぇ…もっと愛想よくしなさいよ!」
「そりゃ女性だったら俺もやる気出るけどさぁ…」
萩の顔を見るなり、ガッカリと言ったような表情を浮かべるジュノン。
萩はニナから気にしないで、と言われても複雑な気持ちになった。
「…じゃあ、次はあんたね。」
納得のいかない表情のレイラがニナの隣にいる男性の方に向かって言った。
「え、エドラー・ピケンス…。」
「よろしくお願いします。」
萩に向かって小さくお辞儀をするエドラーに対して、同じようにお辞儀を返した。
エドラーは何だか居心地が悪そうで目線が落ち着かないのに気づく。
何か悪いことを言ってしまっただろうか、と不安になっているとニナがすかさず声をかけた。
「エドラーは人一倍シャイなの。そのうち慣れるから気にしないで。」
「そっそうなんですか?」
萩がエドラーに尋ねると恥ずかしそうに小さく頷く。
ホッと肩を撫で下ろす萩の様子を見てニナがふっと笑った気がしたがすぐにその気持ちがかき消された。
ガタッと音を立てて椅子からジュノンが立ち上がる。
「あのさぁ、俺思ってたんだけど、何でまだ家政婦募集してたわけ?」
「いきなり何よ、ジュノン。何か言い出すとは思ってたけど、今言う必要あるわけ?」
不愉快そうな顔でレイラがジュノンに言い放つ。
「だってさぁ、前の家政婦すぐにやめちゃったばかりで別に家政婦なんかいらねーだろって言ったじゃん。」
「え…?」
「ジュノン!このバカ!」
「何だよ!事実だろ?」
驚き戸惑っている萩をよそにジュノンとレイラの言い合いが始まる。
エドラーとニナはじっと二人を見ていたがやがてニナが声を出した。
「住み込む予定とは言え、お客の前で騒ぐのはやめて。みっともない。」
「……悪かったよ。」
「…ごめん、ニナ、萩君。」
「い、いえ、大丈夫、ですけど…。」
あれだけ言い合っていた二人が一気に沈静化し、また別の意味で驚く萩。
ニナという女性が何故ボスと言われているかがなんとなく察せたような気がする。
「第一、前の家政婦をやめさせるようにしたのはお前だろ、ジュノン。」
「え゛!?あ、いや、その…お、俺はただ他の場所の方が合ってると思って…。」
「…ふうん。」
冷たい視線を向けられたジュノンはもごもごと何かをしゃべっている。
どうやら完全に萎縮してしまったようだ。
レイラも申し訳なさそうに静かにしている。
「エドラーは家政婦反対か?」
不意にニナがエドラーに話しかけた。
ふるふる、と首を横に小さく振るエドラー。
「ニナが、選んだ人なら、俺は別に構わない、よ。」
「そうか。なら決定だな。」
ニナから聞こえてきた言葉に萩が嬉しそうに反応する。
「そ、それじゃあ…!」
「うん、今日から仮採用だけど住んでもらうから。」
「ありがとうございます!俺、頑張りますね!」
「レイラ、彼にこの家のこと教えてあげて。私はまた寝てくるから。」
レイラが二つ返事で了承すると、エドラーはゆっくりとした動きで部屋を出ていく。
ニナも立ち上がり、部屋から出ようとすると残された一人が不意に声を出した。
「…俺は認めねえ。」
そう言って萩を睨みつけるジュノン。
「……いい加減にしなさいよ、ジュノン。駄々こねたら何とかなるもんじゃないんだから。
ね、萩君。行きましょ。」
レイラがジュノンに言い聞かせるように言うと立ち上がって歩き出した。
萩はおろおろしながらも着いていこうと立ち上がると、ジュノンが何かを呟いた。
「……また追い出してやる…」
「え…」
「とっとと行けよ、家政婦サン。」
何なんだよこいつ、とモヤモヤした気持ちを抱えながら萩はレイラの後についていった。
→続く
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